研究室紹介department
「美学・西洋美術史研究室」とは
美学・西洋美術史研究室は、その名の通り、美学と西洋美術史学の二本の柱の上に立っています。
美術史は歴史学の一部で、美術作品を現在のわれわれの視点からだけでなく、過去の制作当時の人々の目で眺め、歴史の中に作品を位置づける学問です。実際に美術作品を制作することはありませんが、美術史研究者の中には高校や大学で美術部だった人が多いのも事実です。美術を見るのが好きだが、ただ見るだけでなく美術作品について知りたいという人が学ぶべき学問が美術史なのです。
これに対して美学は、哲学の一部と言うことができます。芸術に何の意味があるのかと問うことは、芸術の意味が多様化した現代に生きる者が過去の美術作品を扱う上でも、現代という同時代の芸術に接する上でも、是非とも必要な作業と言えるでしょう。
研究室における長い美学研究の蓄積を生かし、東北大学ならではの美術史研究を目指します。
卒業までのプログラム
東北大学文学部では、学部の2年生から研究室に所属することになります。
2年生で美学・西洋美術史研究室に入ると、まず「概論」の授業で時代的にも地域的にも広い範囲の西洋美術の作品に触れることになります。イメージを記憶する力は、作品を見れば見るほど、身につきます。まずはたくさんの作品を記憶してください。同時に「原書講読」の授業では、欧文で書かれた基礎的な美術史の文章を読む練習をします。西洋美術史を学ぶ上で、英語はもちろん必須ですが、その他の言語(ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ギリシア語、ラテン語など)を読むことができれば、格段に研究のレベルが上がります。美術史を学びたいと考えている人には、文法だけでもよいですから、1〜2年生の間に授業やNHKラジオ講座などを利用してたくさんの外国語をかじってみるのをお薦めします。また、ここに書いてある授業履修方法はあくまでも目安ですから、いろいろな授業に積極的に参加していくことは大歓迎です。
3年生になると、本格的に研究室での研究と生活が始まります。「各論」では、一般向けの概論よりもいっそう専門的な、各先生の現在の研究テーマに沿った講義がおこなわれます。知識はもちろんですが、研究テーマの設定や研究手法、思考方法なども吸収してください。「演習」は学生のみなさんが発表する授業です。欧文の研究論文を読んだり、作品について調べて発表したりしながら、美術史の研究方法を学び、発表や質疑応答、議論のやり方などを身につけます。「実習」は学芸員資格を取るために必要な授業です。古代から現代までの西洋美術史の作品をたくさん知識として吸収する一方で、作品調査の方法や、写真撮影なども学びます。美術館や展覧会にも出かけますし、学芸員の方のお話しを聞いたり、美術館のバックヤードなどを見せていただいたりもします。また年に一度の研究室の研修旅行も、実習の一部に組み込まれています。国内でもひとりではなかなか行かないような美術館も含め、2〜3日間かけていくつも周ります。
4年生になると、いよいよ卒業論文です。各論や演習などの授業に出るかたわら、自分の論文のテーマを決め、全体の構成を考えて、6~7月の構想発表会で中間発表をおこないます。最終的な提出は12月です。その後、2月に卒業論文の口頭試問があります。
海外調査、留学など
日本の美術館にも西洋美術のコレクションはありますし、最近では有名な作品が日本の展覧会に出品されることもありますが、しかし西洋美術史というからには海外にいかないと見られない作品がほとんどです。海外へ行って作品を見ることは、学部生の場合は必須ではありませんが、美術史を勉強する醍醐味は作品を実際に自分の目で見ることです。ひじょうに大事であることは言うまでもありません。全員参加の海外研修旅行はありませんが、2010年には「組織的な大学院教育改革推進プログラム(大学院GP)歴史資源アーカイブ国際高度学芸員養成計画」の一貫として、「ナポリ近郊西洋古代・近世美術史研修」をおこないました。
長期にわたって留学するなら、学部生や博士課程前期(修士課程)の場合は、まず交換留学が考えられます。交換留学とは、東北大学が大学間交流協定を締結している大学に1年間留学することです(半年も可能)。過去には、フランスのレンヌ大学、イタリアのローマ第1大学、ドイツのドルトムント工科大学、スウェーデンのウプサラ大学など、多数の学生がこの方法で留学しています。
博士課程後期での留学は、自分の研究内容に近い研究をしている先生とコンタクトを取り、腰を据えて2年間あるいはそれ以上の留学となることが多いようです。政府給費留学生の試験を受けて半年から1年間の奨学金を受給したり、その他の財団や企業などの奨学金を獲得して留学費用を得た学生も多くいます。
留学についての詳しい情報は、東北大学国際交流センターのホームページをご覧ください。
卒業、修了後の進路
卒業生の進路は公務員、教職、教育関係、マスコミ、IT、メーカーなど多岐にわたります。学芸員資格は学部生の間に取ることができますが、学芸員という仕事は専門分野に関する広範な知識を必要とするため、学部を卒業しただけでなれる人は残念ながらほとんどいません。そのため学部卒業生の就職先は、美術史に直結していないことがほとんどですが、画像を使ったプレゼンテーションなどを得意とする人が多いようです。また、美術史は一般社会とも接点の多い学問分野です。また就職と直接には関係しなくても、美術史を学んだことで美術館に通って作品を見る時の楽しみが深まり、一生の財産を得たという話も聞きます。
修士課程修了後は、一般の就職をする人もいますが、美術館の学芸員になる人もいます。修士課程修了と同時に学芸員になる人もいますが、博士課程に進んでから、あるいは留学をして自分の研究を深め、語学力を磨いてから学芸員に採用される人も多くいます。大学院博士課程に入り、博士論文を提出して「博士(文学)」の学位を取ると、大学教員になるという道も出てきます。
この研究室で学びたい方へ
美学・西洋美術史研究室への最も一般的な入り方は、東北大学文学部に入学し、学部の2年生から研究室に所属するやり方です。しかし他の学部から転学部することも可能ですし、文学部の他の研究室に所属している人が転専修することもできます。
他大学を美術史学以外で卒業した人は、学部の3年生に編入学するという方法があります。第3年次学士編入学については、東北大学文学部入学案内をご覧ください。
他大学を美術史で卒業・修了した人(美術史で卒業論文・修士論文を書いた人)は、大学院入試を受験して博士課程前期2年の課程(修士課程)・博士課程後期3年の課程(博士課程)に入るという方法があります。ただし受験の前に、教官や研究室にコンタクトを取って、自分の希望に合致しているかどうか確認することをお勧めします。例年、7月末のオープンキャンパスにあわせて大学院説明会も開催していますから、それを利用するのもよいでしょう(研究室を訪問するには、電話やメールでの予約が必要です)。
大学院入学試験については、東北大学大学院文学研究科入学案内をご覧ください。
社会人の方が大学院を受験するには、博士課程前期2年の課程・博士課程後期3年の課程ともに社会人特別選抜という枠があります。ただし受験の前に、教官や研究室にコンタクトを取って、自分の希望に合致しているかどうか確認することをお勧めします。例年、7月末のオープンキャンパスにあわせて大学院説明会も開催していますから、それを利用するのもよいでしょう(研究室を訪問するには、電話やメールでの予約が必要です)。出願資格や試験については、東北大学大学院文学研究科入学案内をご覧ください。
過去の学位論文
博士論文
- 瀬戸はるか「アーニョロ・ブロンヅィーノとパラゴーネ―16世紀イタリアにおける美術理論と実践―」(2021年度)
- 高橋健一「アルカディアの目――1700年前後イタリアの美術と文化」(2020年 博士論文)
- 足達薫「15世紀末から16世紀にかけてのイタリアにおける美術の変容にかんする研究」(2018年度 論文博士)
- 小松健一郎「コレッジョと16世紀初期ポー川流域の芸術――「周縁」におけるマニエラ・モデルナの形成」(2011年度)
- 石澤靖典「サンドロ・ボッティチェッリ研究――都市イメージの形成と芸術家の役割――」(2010年度)
- 森田優子「ヴィットーレ・カルパッチョ研究――「スラヴ人会」連作を中心に――」(2009年度)
- 加藤奈保子「一七世紀初頭のローマ社会とカラヴァッジョ――伝統と革新――」(2009年度)
- 佐々木千佳「ジョヴァンニ・ベッリーニと十五世紀ヴェネツィア社会」(2008年度)
- 石鍋真澄「ピエロ・デッラ・フランチェスカ」(2005年度 論文博士)
修士論文
> 2023年度
- なし
> 2022年度
- 河村耕平「ヨーリス・フフナーヘルにおける自然描写の源泉と意図」
> 2021年度
- 江村哲朗「ジュゼッペ・アルチンボルドとプラハ宮廷文化―-源泉と意図の解明―-」
- 野々瀬真理「ファウヌスの家の動物表彰–古代ローマの静物画に関する一考察–」
- 平沢遼「ソフォニズバ・アングイッソーラ研究-―ゲーム文化との関連性―-」
> 2020年度
> 2019年度
> 2018年度
- なし
> 2017年度
- 河西宏紀「ミケランジェロ研究――「未完成」のイメージに見るかたちの生成と変容」
- 瀬戸はるか「アーニョロ・ブロンヅィーノとメディチ宮廷――《甲冑を着たコジモ一世の肖像》(ウフィツィ美術館)を中心に――」
- 遠藤彩瑛「ポンペイ「アマンドゥス神官の家」の壁画にかんする研究――古代ローマの風景画とコピーの使用」
> 2016年度
- 湯山彩子「ピーテル・サーンレダム研究――教会画にみる都市と教会の変容」
> 2014年度
- 篠崎亮「ヤン・ホッサールトの愉楽の芸術――《ウェヌスとクピド》を中心にして」
> 2013年度
- 都築梢子「ヒエロニムス・ボッス作《磔刑の殉教者の三連祭壇画》に関する研究――図像形成を中心に――」
> 2012年度
- 臼井奈美「ティツィアーノ研究:《ダナエ》を中心に」
> 2011年度
- 斎藤陽介「アングル研究――宗教画における「聖と俗」――」
> 2010年度
- 二宮洋輔「17世紀イングランドの絵画伝統とヴァン・ダイクの革新性――《ペンブローク家肖像》を手がかりに――」
- 谷口依子「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール研究――《帽子のあるヴィエル弾き》を中心に――」
- 及川恵美「アンニーバレ・カラッチのパラッツォ・マニャーニ大広間フレスコ画研究――枠装飾を中心に――」
卒業論文
> 2020年度
- 「ニコラ・プッサン研究ー《マナの収集》(ルーブル美術館)を中心にー」
- 「パストゥール研究所地下礼拝堂のモザイク装飾における表現の新しさ」
- 「ヨハネス・フェルメール研究——《画家のアトリエ》を中心に——」
- 「アントワーヌ・ヴァトー作《シテール島の巡礼》考察——粗描きとメランコリーの問題を中心に——」
- 「ヨーリス・フーフナーヘル研究——《植物や果物、小動物に枠取られたレダと白鳥》(New York, Joel M.Goldfrank)を中心に——」
- 「ペーテル・パウル・ルーベンス研究──《スザンナの沐浴》を中心に──」
- 「アルブレヒト・デューラー研究──《ばら冠の祝祭》を中心に──」
- 「フィンセント・ファン・ゴッホ研究——《馬鈴薯を食べる人々》を中心に——」
> 2019年度
- 「アルブレヒト・デューラー研究―《メレンコリアⅠ》を中心に―」
- 「ジュゼッペ・アルチンボルド研究――《ウェルトゥムヌスに扮したルドルフ二世》を中心に――」
- 「エドワード・ホッパー研究―《ナイトホークス》を中心に―」
- 「アンブロジウス・ボッスアールト研究―《開放龕におかれた花瓶の花》(マウリッツハイス美術館蔵)を中心に―」
> 2018年度
- 「聖ポール天主堂を中心に―マカオでのヨーロッパ美術の影響について」
- 「ジョン・エヴァレット・ミレー研究ーー≪オフィーリア≫を中心に」
- 「ピエール・ボナール研究――世紀転換期におけるヌード作品を中心に――」
- 「カラヴァッジョ研究――《悔悛のマグダラのマリア》(ドーリア・パンフィーリ美術館)を中心に――」
- 「アルブレヒト・デューラー研究―《1500年の自画像》を中心に―」
- 「ピーテル・サーンレダム研究――《ユトレヒトの聖ペテロ聖堂の内部》を中心に――」
- 「トゥールーズ=ロートレック研究ーー≪ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ≫(多色刷りリトグラフ)を中心に」
- 「ルーベンス研究――《パエトンの墜落》を中心にして――」
- 「ダヴィッド研究――《ナポレオンの戴冠式》を中心に」
- 「『アウグストゥスの平和の祭壇』研究――通称《テッルス・レリーフ》の図像解釈を中心に――」
- 「ルーカス・クラーナハ(父)研究―《アダムとエヴァ》(コートールド美術館)を中心に―」
> 2017年度
- 「ジョヴァンニ・ベッリーニ研究――《サン・ジョッベ祭壇画》にみる政治性」
- 「ソフォニスバ・アングイッソラ研究――自画像の機能について――」
- 「ピエール=オーギュスト・ルノワール研究――《雨傘》(ナショナルギャラリー、ロンドン)における近代都市の表象をめぐって――」
> 2016年度
- 「ジャンバッティスタ・ティエポロ研究――《ロザリオの制定》を中心に――」
- 「クロード・ロラン研究――対作品制作をめぐって――」
- 「カラヴァッジョ研究――《メドゥーサ》を中心に――」
- 「ジャン=フランソワ・ミレー研究――《春(ダフニスとクロエ)》を中心に――」
- 「フランシス・ベーコン研究――《磔刑》(1965)を中心に――」
> 2015年度
- 「通称《アフロディテとパン》をめぐって」
- 「『ボルゲーゼ・タイプ』のアレス像をめぐって―変化するコンテクストと意味―」
- 「ヘルマフロディトス研究―宗教性と世俗性をめぐって―」
- 「アントネッロ・ダ・メッシーナ研究―《書斎のヒエロニムス》を中心に―」
- 「ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル研究―《グランド・オダリスク》(ルーヴル美術館)を中心に―」
- 「ベルト・モリゾ研究―家族の肖像を中心に―」
- 「ウィリアム・ブグロー研究―肖像画を中心に―」
> 2014年度
- 「《アンティキテラの青年》――古代彫刻における裸体像の系譜――」
- 「ペルセウス図像研究――飛行する神と人間」
- 「ポンペイの壁画におけるモチーフの考察」
- 「ドメニコ・ギルランダイオ研究――《老人と孫の肖像》を中心に――」
- 「ヤン・ブリューゲル(父)研究―《空気の寓意》を中心に」
> 2013年度
- 「ミケランジェロ作《バッコス》(バルジェッロ美術館所蔵)についての考察――庭園との関係を中心に」
- 「ピーテル・サーンレダム研究――ハールレムの聖バーフォ教会をめぐって」
- 「ヘンドリック・ホルツィウス研究――《聖母マリア伝》を中心に――」
- 「ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ作《ルチェッライの聖母》に関する研究」
- 「レンブラント研究――《プードルを連れた自画像》を中心に」
- 「カール・ラーション(1853-1919)研究――「スウェーデンらしさ(Swedishness)」にかけた画家――」
> 2012年度
- 「ガッタメラータ騎馬像の肖像性について」
- 「ピーテル・ブリューゲル(父)の寓意画に関する研究」
- 「エル・グレコ研究」
- 「ミラーペインティングと一回性の美術」
- 「マネ研究――《フォリー=ベルジェールの酒場》を中心に」
> 2011年度
- 「ヘレニズムから初期ローマにおける戦闘図に関する研究」
- 「ダリとトロンプ・ルイユ」
> 2010年度
- 「ロートレックのポスター作品の革新性について――《ムーラン・ルージュのラ・グーリュ》を手がかりに――」
- 「ヨース・ファン・クレーフェ研究――「聖家族」を中心に」
- 「ティツィアーノ研究:プラド美術館《ヴィーナスとオルガン弾き》を中心に」
- 「アルテミジア・ジェンティレスキの初期作品《スザンナと長老たち》における画家の革新性」
- 「ヤン・ホッサールトによるベルリンの《聖母子》」
- 「ギュスターヴ・モロー《オイディプスとスフィンクス》(メトロポリタン美術館)における画家の自己表象」
- 「ソフォニスバ・アングイッソラの自己成型――《ソフォニスバを描くカンピ》をめぐる考察」
> 2009年度
- 「ナポリ国立博物館蔵《ファルネーゼの牡牛》について――動物レリーフを中心に――」
- 「アングルの宗教画研究―≪博士たちの間のイエス≫を中心に―」
- 「《キュレネのアポロン》――キュレネにおけるアポロン信仰」
- 「ジョット研究――スクロベーニ礼拝堂の壁画を中心に」
OB、OG紹介
これまで美学・西洋美術史専修を卒業した学生は360名を越え、そのうち50名あまりが大学院に進学しています。大学院修了者の多くは、美術館、大学などで活躍しています。
OB、OGから、これから美術史を学ぶ人、学芸員をめざす人へのメッセージをもらいました。(名前をクリックすると、メッセージが現れます)。
- 武関(遠藤)彩瑛(栃木県立美術館)
- 阿部桃子(群馬県立美術館)
- 吉川咲子(ふくやま美術館学芸員)
- 臼井奈美(喜多方市立美術館学芸員)
- 谷口依子(姫路市立美術館学芸員)
- 二宮洋輔(姫路市立美術館学芸員)
- 渡辺亜由美(滋賀県立近代美術館学芸員)
- 佐々木千佳(秋田大学准教授)
- 工藤弘二(ポーラ美術館学芸員)
- 加藤奈保子(福島大学准教授)
- 小松健一郎(北九州市立美術館学芸員)
- 齊藤陽介(上原近代美術館学芸員)
- 石澤靖典(山形大学准教授)
- 門田彩(北九州市立大学准教授)
- 奥田亜希子(北九州市立美術館学芸員)
- 鈴木幸野(長野県信濃美術館・東山魁夷館学芸員)
- 高橋健一(成城大学教授)
- 武井敏(碌山美術館学芸員)
- 喜田早菜江(元 山ノ内町立志賀高原ロマン美術館)
- 柳原一徳(島根県立美術館学芸員)
- 谷古宇尚(北海道大学教授)